ナポレオンカーフ(オイルヌバック)の水ぶくれ&シミを目立たなくする
お気に入りの折り財布(ナポレオンカーフ ボナパルトパース)に、いつの間にか「水ぶくれ」が…
相当ショックですね、これは。
何が原因かはわかりません。気付いたときには遅し…急いで拭いたのですが、すでに出来上がっていました。あっという間の出来事でしたね。
ちなみに、これはまだ防水スプレーを塗布する前。つまり、おろしたての時に出来てしまった水ぶくれです。きちんと最初にケアを施していれば、結果はまた違ったのかもしれません。
水ぶくれとそのフチがシミになっていて、結構目立ちます。
まぁもうこうなってしまった以上はしょうがないので、ダメもとでメンテナンスをしてみます。失敗したら買い換えればいいや、ぐらいの覚悟で。
わりとやれた
処置後です。ぱっと見ではわからなくなるぐらい目立たなくなりました。
左が処置前、右が処置後。よ~く見ればうっすらと輪郭がわかるぐらい。ほぼ気にならない程度まで薄めることに成功です。
これから、何をしたのか書いていきます。同じ症状で悩まれている方は参考にしていただければと。
ただ、実験もかねて好き勝手やってますので、その点はご了承ください。試される場合はくれぐれも自己責任でお願いします。
あと、この革の場合、ちょっとしたシミや色ムラは「放置」。とりあえずは何もせず「しばらく使ってみる」というのも手ですよ。
経年変化(エイジング)と共に落ち着いていき、目立たなくなるケースがあるからです。かえってそれが味となることも。そういうレザーです。
今回のこのケースでも水ぶくれに気付いてから、半年ぐらいそのまま使っています。結果、残念ながら一向に消えそうな気配がないので、処置を施すことに決めました。
道具
使ったものは、
- ケア用のクロス…1枚
- 適当な布…1枚
- 少量の水をいれる適当な容器…1つ
(茶碗とかでもなんでもOK) - 中ぐらいのスプーン…1個
- 保湿クリーム…ごく微量
この5つ。活躍したのは「スプーン」と「クリーム」です。
下準備
下準備として財布の中は全てカラにします。
「作業をする面の裏」が小銭入れの場合、止め金具の”隆起(凸凹)”が支障をきたすおそれがありますので、中に適当な布を詰めておくといいです。新聞紙なんかでもOK。
フチをぼかす
「シミが出来てしまった場合はあえて周辺を広く濡らす」
スムースレザーでは有効な手段ですがはたしてヌバックではどうでしょうか。やってみます。
濡れてるかわからないぐらいほんの少しだけクロスを湿らせて、シミが特に目立つ水ぶくれの”フチ”を「ぼかす」ように叩いていきます。
- トントントントン…(ぼかす)
- ギュッギュッギュッギュッ…(のばす)
今回は1のように叩く拭き方と、2のように伸ばす拭き方を織り交ぜながら行いましたが、2の拭き方はやめた方がいいです。「シミを消したい」という気持ちが先走り過ぎたよくない拭き方です。
失敗しました。
この時の見た目がこれで、フチに固執するあまり、ドーナツ状に濡らしすぎています。もっと周辺に均一に広げ、ぼかすようにしたかったんですが上手くいきませんでした。
肝心の”フチのシミ”は目立たなくなりましたが、これだと新たに色ムラが発生してしまいますので、部分的に濡らすのはお勧めできません。
いっそのこと全面を濡らそうかとも考えましたが、ちょっと勇気がいるのでとりあえずこのまま続行していきます。
表面が乾いたら次の工程に移ります。
スプーンでフチを伸ばす
スプーンの側面を使って、”水ぶくれのフチ”を伸ばしていきます。
これは「水ぶくれとなって浮き上がってしまっている革」を、再度「寝かして正常な状態に戻す」ために行っています。
ですので、正確には”伸ばす”のではなく”寝かす=すり潰すように押さえる”なんですが、ここでは便宜上「伸ばす」という表現を使わせていただきます。
革を痛めないように、ほんの少しだけ力は入れる。絶妙なチカラ加減が必要です。
「グイッ」「グイッ」っと浮いたフチの部分を「潰す」ように行っていきます。
力をいれすぎると革が伸びきってしまうおそれがありますので、そこだけは慎重に。1の時と同じように少しづつ少しづつ、様子を見ながら行います。
このぐらいまで伸ばしきったら、次の工程に進みます。
クリームを塗る
本来、この革に保湿クリームは不要ですが、逆にクリームを塗ることであえて色ムラを作りシミを目立たなくできるかもしれないと考えました。試してみます。
薄く、少しづつ。全体に丹念に伸ばして、乾拭きします。ん?なんだかいけそうな気が。
念入りにフチを寝かす
ここからは微調整。この段階でまだ浮き上がっている箇所があればスプーンで再度伸ばし、寝かせます。
スプーンの側面にわずかにクリームをつけ、すり潰すように伸ばすと効果的でした。ほんのわずかの量です。力は入れすぎず本当に少しづつ。
乾拭きをして、まだ浮き上がっている箇所がないか確認します。
光を斜めからあてるなどして入念にチェックします。浮き上がりがあれば再度スプーンで寝かします。この工程を何度も繰り返し行い、丹念に革を寝かせていきます。
浮き上がりはほぼ完全になくなりました。クリームを塗った箇所に若干色ムラが生じていますが、シミが目立たなくなったので結果オーライです。全くの許容範囲。
正直、ここまで持ち直してくれるとは思っていなかったので素直に嬉しいです。とりあえずはこれで様子を見て、後は革本来の力(エイジング)に委ねてみます。
手順まとめ
今回行った手順です。
- シミを目立たなくするため、あえて水拭き
- スプーンを使い、水ぶくれのフチを寝かしていく
- クリームを塗布(ほんのわずかの量を薄く広く)
- 浮き上がりがあるか入念にチェック
- スプーンを使い、水ぶくれのフチを寝かしていく(微調整)
※必要に応じてクリームを使う - 乾拭きをして4に戻る
どの工程も一気にやろうとはせず、様子を見ながら少しづつ行うのがポイントです。
ひと通り終えた後、数日寝かして4以降の処置を行うのも効果的でした。
教訓
「使い始める前の防水ケア」の必要性をあらためて痛感。レザー製品全般に言えることですが、特にヌバックのような起毛レザーは最初の防水ケアが死ぬほど大切だと言うことがよくわかりました。
これをするかしないかで、いざ水に濡れてしまった時のダメージが天と地ほども違います。以後は気をつけようと思います。
もし、このレザーを買ったばかり(または買おうとしていて)で、まだ防水ケアを施していないという方は、当サイトを反面教師にしてください。できるだけ早めに処置を施すことを推奨いたします。
万一、ケアを施してなくて水ぶくれやシミになってしまったとしてもあきらめずにメンテナンスを施せばよくなる可能性があります!
- とりあえずは何もせずそのまま使い続けるか
- 買ったお店(または専門店)に相談するか
- 自らの手でメンテナンスに挑戦するか
これらを判断して3の場合は覚悟を決めて自己責任で行ってください。
少々乱暴な言い方をさせていただくと「自分でメンテに挑戦する」のも革製品を育てるひとつの醍醐味ですから(例え失敗したとしても)、臆することなくガンガン攻めればいいんですよ。学ぶこともありますから。
状況に応じて必要な処置を参考にしていただければ幸いです。